睡眠薬は悪者なのか?

睡眠薬は悪者なのか?

睡眠のお悩みを聞いていると、

「自然に眠れるようになりたい」「睡眠薬をやめたい」

そういう声をよく聞きます。

 

できれば手放したい睡眠薬。

でも、悪者扱いはしないであげてください。

 

薬物療法は対処療法と捉えられがちですが、薬の服用をきっかけに

「眠れた」という安心や自信が生まれることも大切。

眠ろう眠ろうとしても眠れない悪循環を断ち切ることにもなります。

 

睡眠薬ってどういうメカニズムで効くの?

睡眠、そして覚醒の仕組みを担っているのは脳です。

まず、脳を休息させる睡眠のコントロールセンターとも言えるのが

脳の「視索前野(しさくぜんや)」と呼ばれる部分。

 

そして、覚醒の役割を担っているのが

脳の「視床下部外側野(ししょうかぶがいそくや)」と呼ばれる部分です。

 

この2つの箇所が、アクセルとブレーキのように両輪で動いていて、

脳の脳幹と呼ばれる部分に「覚醒」と「休息」の指令を送っているんです。

 

睡眠のコントロールセンターが「休め」の信号を出すと、

覚醒物質を作る働きにブレーキがかかります。

このブレーキの正体が「GABA」

睡眠コントロールセンターがGABAを作り出して、脳幹に送り出すと

覚醒物質の分泌が抑えられる=眠くなるというワケです。

 

 なのでGABAの作用を高めてあげれば、覚醒にブレーキが働くことになって、

覚醒しすぎの状態を抑えることができます。

 

この働きを生かした睡眠薬が「ベンゾジアゼピン」系の睡眠導入剤。

 

GABAの受容体に働いて、GABAが受容体にくっつきやすくすることで、

GABAの効果を高めようという薬です。

「不安を抑え、筋肉を弛緩させる」受容体と「睡眠鎮静作用」を高める受容体、

どちらの効果も高めるのが「ベンゾジアゼピン系(BZ系)」の睡眠薬。

 

一方、「睡眠鎮静効果」を高める受容体のみに作用するのが

「非ベンゾジアゼピン系(非BZ系)」の睡眠薬です。

 

ベンゾジアゼピン系(BZ系)の種類

一般名 商品名 作用時間
トリアゾラム ハルシオン、トリアラム 短時間
エチゾラム デパス 短時間
ブロチゾラム レンドルミン、グッドミン 短時間
リルマザホン リスミー 短時間
ロルメタゼパム エバミール、ロラメット 短時間
メニタゼパム エリミン 中間
フルニトラゼパム ロヒプノール、サイレース 中間
エスタゾラム ユーロジン 中間
 ニトラゼパム ベンザリン、ネルボン 中間
クアゼパム ドラール 長時間
フルラゼパム ダルメート、ベノジール 長時間
ハロキサゾラム ソメリン 長時間

 

BZ系の作用

・睡眠をもたらす

・不安や緊張を和らげる

・筋肉を緩める

・痙攣を防ぐ

BZ系のメリット

・即効性がある

・短時間から長時間まで色々な種類があり、状況に合わせて使える

・不安や筋肉の緊張が和らぐものもある

 

BZ系のデメリット

・睡眠の質が落ちる

・ふらつきが出るなどの副作用

 

非ベンゾジアゼピン系(非BZ系)の種類

一般名 商品名 作用時間
ゾルピデム マイスリー 超短時間
ゾピクロン アモバン 超短時間
エスゾピクロン ルネスタ 超短時間

 

非BZ系の作用

・睡眠にのみ作用する

 

非BZ系のメリット

・睡眠が深くなる

・作用時間が短く、翌朝の眠気、ふらつきの副作用が少ない

・依存性が少ない

 

非BZ系のデメリット

・効果がマイルド

・種類が少なく、超短時間作用型しかない

・服用後の記憶が飛んでしまう

 

新しいタイプの睡眠薬も

睡眠薬は、このBZ系、非BZ系が主流でしたが、

2010年から新しいタイプの睡眠薬の開発も進んでいます。

 

2010年に開発されたのが「メラトニン受容体作動薬」。

体内時計のリズムを調節しているメラトニンに働いて、

自然な眠気を促してくれる薬です。

 

メラトニンは、体内時計の調節に関係しています。

睡眠と覚醒のリズムを調節する働きがあるホルモンの一つです 。

メラトニン受容体作動薬は、脳内のメラトニン受容体に作用して、

体内時計の睡眠と覚醒のリズムを整えて、睡眠を促します。

 

メラトニン受容体作動薬

一般名 商品名 作用時間
ラメルテオン ロゼレム 超短時間

 

メラトニン受容体作動薬の作用

・メラトニンに働いて、自然な眠気を促す

 

メラトニン受容体作動薬のメリット

・自然な眠気が強くなる

・入眠障害、中途覚醒にある程度有効

・熟眠障害に有効

・リズムを整える効果がある

・副作用が少ない

・依存性がない

 

メラトニン受容体作動薬のデメリット

・実感が得られにくい

・効果が弱い

・翌朝の眠気が多い

・薬の価格が高い

 

 

もう1つは2014年に開発された「オレキシン受容体拮抗薬」。

より自然に近い睡眠をもたらす睡眠薬です。

 

「オレキシン」は、起きている状態を保ち、

安定化させる(覚醒を維持する)脳内の物質で。

オレキシン受容体拮抗薬は、その「オレキシン」の働きを

弱めることによって眠りを促すタイプの薬です。

 

オレキシン受容体拮抗薬

一般名 商品名 作用時間
スボレキサント ベルソムラ 短時間
レンボレキサント デエビゴ 短時間

 

オレキシン受容体拮抗薬の作用

・脳の覚醒を維持するオレキシンの作用を阻害して、睡眠の導入を早める

 

オレキシン受容体拮抗薬のメリット

・入眠障害にそこそこ有効

・中途覚醒に有効

・睡眠が深くなる

・副作用が少ない

・依存性が少ない

・処方日数の制限がない

 

オレキシン受容体拮抗薬のデメリット

・症例数が少ない

・悪夢が多い

・翌日の眠気が多い

・薬の価格が高い

 

 

睡眠薬は怖い?

「睡眠薬はこわい」というイメージをもっている方も多いかもしれませんが

昔に比べて、いまの睡眠薬は、副作用が軽減され、安全性も高まってきています。

ただ、安全性が高いと言われている睡眠薬でも、

飲まないで眠れるならそれに越したことはありません。

 

睡眠薬のメリット、デメリットを正しく理解して、

眠れるようになってきたら、徐々に薬を減らしたり、

薬をやめるようにするなど、医師と相談しながら

治療法を選択していくのが大事。

 

生活習慣の改善も、同時に進めていきましょう!

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