「部屋の乱れは、心の乱れ」
「部屋は、その人の心を映す鏡」
SNSを開けば、そんな言葉と一緒に、
生活感の一切ない美しい部屋の写真が流れてくる。
モデルルームのような真っ白な空間。コード一本落ちていないデスク。
それを見るたびに、私は少しだけ胸がキュッとなる。
画面から目を逸らし、自分の部屋を見渡す。
読みかけの本が積まれたサイドテーブル。
脱ぎ捨ててしまったスウェット。
デスクの上に広げっぱなしの、仕事の資料や布のサンプル。
「あぁ、今の私の心は乱れているんだな」
そうやって自分にバツをつけるのが、一時期の癖になっていた。
でも、ある日ふと思ったのだ。
部屋って、誰かに見せるための「ショールーム」じゃなくて、
私が私を守るための「秘密基地」でいいんじゃないか、と。
戦うための、コックピット。
私には、生まれつき右肘から先がない。
だから私の生活は、すべて「左手一本」で完結するようにできている。
例えば、よく使うハサミやペンは、引き出しにしまうよりもデスクに出しておいた方が使いやすい。 重たいバッグはクローゼットの奥よりも、ソファのすぐ横にあった方が楽だ。
他人から見れば「散らかっている」ように見えるかもしれない。
でも私にとっては、これが一番効率よく動ける、最良のコックピットなのだ。
これを「心の乱れ」と呼ぶのなら、乱れていて上等だと思う。
私が心地よく生きるための配置が、
世の中の「綺麗」と違っていたとしても、それでいい。
「完璧じゃない」が、落ち着く理由。
私がやっているブランド『SUNNY & GO』で
大切にしている「Rough & Real」という言葉。
これは、そのまま私の部屋作りにも通じている。
ピシッとアイロンが掛かったシーツよりも、
洗いざらしのリネンの方が気持ちいい。
機械で正確にプリントされた柄よりも、
インドの職人さんが手で押した、少しズレやかすれがある
ブロックプリントの布に惹かれる。
最近新調したPCケースもそう。少しクたっとしていて、完璧な長方形じゃない。
でも、その「隙」みたいなものが、部屋にあるとホッとする。
完璧な部屋に住んでいたら、私自身も常に「完璧な私」でいなきゃいけない気がしてしまうから。
部屋くらいは、ダメな自分も、疲れた自分も、全部許してくれる場所であってほしい。
扉を閉めれば、そこは別世界。
仕事で嫌なことがあった日。 なんだかうまくいかなくて落ち込んだ日。
そんな日は、玄関の鍵を閉めた瞬間に「世界」をシャットアウトする。
そして、お気に入りの香りをシュッとひと吹きする。
散らかったデスクも、飲みかけのコーヒーも、そのままでいい。
好きなものに囲まれて、誰の目も気にせず、泥のように眠る。
そうやってエネルギーを充填するための場所が「秘密基地」だ。
もし今、あなたが散らかった部屋を見て
「ちゃんとしなきゃ」と自分を責めているのなら。
一度、その「鏡」を割ってしまおう。
部屋は、心を映す鏡じゃない。
傷ついた心を隠し、癒やし、また明日へ送り出してくれる、あなただけのシェルターだ。
だから今日は、片付けなんてしなくていい。
その「秘密基地」の中で、好きな香りに包まれて、ゆっくり休んでほしい。